
Artist's commentary
いただき貴き十字の峰
その騎士は剣を振るう事を好まなかった。
槍も弓も同じように地に置いた。
手にしたものは痩身にはあまりある大型の盾。
敵を倒す事より、
味方を守る事に道を見いだした。
多くの人々は彼を称賛した。
罪なき者。
尊く、貴く、慈愛に満ちた聖騎士だと。
戦場の邪悪さ。戦いの悍ましさから目を背けるように。
騎士はその内面を人々に洩らす事はしなかった。
彼らの夢想を断罪するほど人間的ではなかった。
ただひとつ、後に続く者に言葉を残した。
心せよ、我が盾を受け継ぐ君よ。
戦いに善はない。
盾を選び背後の人々を守る事も、
剣を持つ事に等しいのだと。